2022年10月05日
“トットちゃん”からの質問への驚くべき答えは
黒柳徹子著 「不思議の国のトットちゃん」から
私はソマリアの孤児院の、日当りのいいコンクリートの廊下の所で、体の大きい女の子が、ゴザみたいなものの上に、うずくまっているのを見ていた。
黒い髪の毛はボサボサで顔がよく見えなかった。
孤児院の女の先生が「あの子はチエ遅れというか知的障害があり、体はポリオのようで、歩くことも、動くこともあまり出来なくて可哀そうなんです」といった。
私は、トットちゃんの頃、一番仲が良かったのがポリオの泰明ちゃんだったから、その子の近くに寄ってみた。顔をのぞいて「こんにちは」といったら、下をむいたままモソモソと「こんにちは」といった。
「あなた、足が悪くて残念ね、みんなと一緒にボール蹴られなくて。」私がいうと、その子は顔をあげた。
その子の手をとって「お友達はいないの?」と聞いた。
その子は思いがけず、「いるわ。二人。一人はフィーマちゃん」と、はっきりいった。
私は大声で、「フイーマちゃんいない?」と叫んだ。庭で遊んでた中から、髪の毛にリボンをつけた小さい女の子が走って来た。そして、私の膝にチョコンと乗った。
私は、そのフイーマちゃんに、「お友達になってるの?」と聞くと、大きく、うなずいて、「そう、お友達!」といって、大きい女の子のボサボサ頭をなでた。
私は、私のいたトットちゃんの小学校のようだ、と思った。
子どもは、まわりの大人が干渉しなければ助けあうものだと、私の校長先生は知っていたから、いつも「助けてあげなさい」と言わずに、一緒だよ―!みんな一緒にやるんだよ!」とだけ私たちに言ったのだった。
あとで撮影してた平間さんが「黒柳さんが話しかけるたびに、どんどんあの子、顔の表情が豊かになって、はじめとは、全く違う顔になってましたね」といった。
そのことは、私は気がつかなかったけど、最後の質問をしたとき、私だけでなく、孤児院の先生たちも全員が「あっ!」というくらいのことを、このチエ遅れか知的障害がある、といわれてた女の子は、言ったのだった。
私が「大人になったら、あなた、なにになりたいの?」と開いたら、その子は顔をあげて、ゆっくりだったけど、しっかり、こういった。
「国連につとめて、世界中の子どもを守ってあげるの!。」
あたりに感動の、ため息がひろがった。こんな名もない町の小さな孤児院の少女がこんなことを考えていたなんて。
恐らくこれまで誰も、この子に、こういう質問は、しなかったに違いない。
もし、していれば、チエ遅れだとか、知的障害がある、とは、言わなかったのかも知れない。
確かに、はじめ下を見てうずくまっているのを見たとき、私も、そうだと、一瞬思ったくらいだったから。
でも、可愛くて小さいフイーマちゃんは、わかっていたに違いない。頭のいい子なんだって。
だから尊敬して、身のまわりを手伝ってたのかも知れない。
子どもだけが持っている、大人には想像もつかない世界を、私は、破壊しつくされたハルゲイサの町で見た。
黒柳さんは、長い間ユニセフの活動として世界中の子どもたちの支援にあたってこられました
聞く、聴く、訊く(質問する)
キャッチボール
まず聞く、その後に相手の取りやすいところへ言葉を投げる
質問には、大きな力を持っています
相手の方の、あいまいだったけれど、本当にしたかったことを引き出すこともできます
ゆるしの質問、勇気を引き出す質問、一歩踏み出すきっかけの質問・・
もしこちらがこれはいいなと思っていても、目の前の方にそのまま話すのではなく、質問して答えてもらうことで、相手の方の中に、強く刻まれます
人は与えられたことには顔をそむけることもあるけど、自分の言葉には責任を持つことに・・
前に向けて進めるような質問を心がけたいものです
Posted by 尾上 正 at 05:50│Comments(0)